ITコンサルでアベるとは?アベっている時にやること3選

ITコンサルでアベるとは?アベっている時にやること3選

前回に引き続きITコンサルティングの実態について解説していきます。

前回の説明では、
ITコンサルタントがイメージと違い、ただの人売りIT業をしているのは、ITコンサルタントがシステム開発に大量に人を動員しなければ稼げないという仕組みから来ていると、説明しました。

ではなぜそのような仕組みになっているかと言うと、
ITコンサルティングファームはアベっている人達を極力減らして、客先常駐する人を増やすことで売上を拡大するからです。

そのためにまず、営業・提案活動を行いリーダー格を送り込み(人売りIT業)、リーダー格が認められたタイミングで人員増加を提案するということ。

IT系コンサルティングのメイン業務が経営層への提案活動ではなく、システム開発のサポートであるため、まずは人を動員させて客先の現場を回すことが最優先であること。

これらはアベっているときの営業・提案活動があるからこそ成りなっています。
では、ITコンサルタントが今回はアベっている時の活動内容について具体的に紹介します。

前回の記事を読んでからの方がすんなりと理解できると思うので、先に目を通しておくことをオススメします。

ITコンサルタントの理想と現実のギャップ。ITコンサルは人売りIT!?

 

アベるということ


コンサルティングファームでは独自用語があり、「アベる」という言葉がよく使われます。

アベるの意味はAvailableになる、つまりプロジェクトに参加しておらず売上に貢献していない状態になっていることです。
(例:次のプロジェクトが決まってなくて8月からアベってしまう。)

アベっている間にやることといえば
・新規案件獲得に向けて営業・提案活動を行う
・資格取得や業務につながる勉強をする。
・人手の足りていないプロジェクトで簡単なリサーチ業務を手伝う。

一般的にはこの3種類でしょう。コンサルティングファームにより少しずつ異なります。

IT系のコンサルティングファームというのは、客先常駐の案件がほとんどです。本社オフィスは収容人数が少なく、社員全員を収容する必要がありません。そのため会社のブランド力向上のためや、営業力向上のため、利便性向上のために都内の一等地の一等ビル内にオフィスをレンタルします。

そして、アベっている人には待機用の別の部屋が与えられます。ほとんどのコンサルティングファームでは本社とは別のビルのオフィスフロアをレンタルしているのが実態です。案件に入れていない社員までコストの高い本社ビルで囲っておく必要がありませんからね。

アベっている間の業務内容について詳しく説明していきます。

営業・提案活動


ITコンサルタントが営業も兼ねる会社があれば、営業職が分けれられている会社もあるので、その違いにより業務内容が大きく異なることになります。営業活動が苦手な人や、コンサルティング活動に専念したい人は営業職とITコンサルタント職がハッキリと区分けされている企業を探すのが無難でしょう。

ここではITコンサルタントが営業や提案活動を行う場合について説明します。

IT系のコンサルティングファームはSIer(システム開発会社)とは違い、競争入札により他社と争って案件を獲得することはあまりありません。既存のクライアントへ困っていることがないか、身近やグループ企業で困っているところがないかなどのヒアリングを行うところから営業活動スタートです。

そこでもし困っているクライアントが見つかれば、大まかな困りごとの内容をヒアリングします。電話か、クライアント先の訪問による軽い打ち合わせのような場合が多いです。

そこからヒアリングした内容を自分でこなすことができれば自分がリーダーとなり、顧客への提案活動のための資料を作成します。
自分の専門外過ぎて対応できそうになければ社内のアベっている人の中からリーダーになれそうな人を2人くらい見つけ出して提案チーム発足となります。

提案活動といっても、PowerPointを使って数十枚の資料を作ってコンサルティング活動の体制、計画概要、解決手法、社内の事例紹介などをきちんと作り込んで提案する場合はありますが少数派です。

完全に新規の企業であったり、今後の拡大が見込まれる大型のクライアントであったりすれば、このように手厚く提案していきます。

新規クライアントではなかったり、小規模の案件だったり、割と適当なクライアントだったりすると提案資料のようなものは作らずに、リーダークラスのITコンサルタントで詳細内容のヒアリングを行い、具体的な業務内容のすり合わせと、期間や価格の交渉を行います。

もしこれが営業職とITコンサルタント職が分かれる場合もほとんど変わりません。
営業が見つけてきて、契約関連の処理やクライアントとの営業を中心に行ってくれるのでITコンサルタントの負担が減ります。

クライアントへの提案活動時にも、社内のアベっている社員からリーダークラスのITコンサルタントを2人~5人くらい適任者を探してクライアント先へ連れていきます。これが客先面談とよばれるものです。

ITコンサルタントはクライアントとの間に準委任(じゅんいにん)契約もしくは請負(うけおい)契約と呼ばれる契約を結ぶことがほとんどなのですが(まれに派遣契約)、準委任契約でも請負契約でも契約前にクライアントからの面接は法律上禁止されています。そのため顔合わせや事前面談と呼ばれています。しかし実質はクライアントからの面接です。転職面接と似たようなイメージですね。

ITコンサルタントに限らず客先常駐をするITエンジニアであれば、この客先面談(実際は客先面接)が行われます。既に自社内のリーダーがクライアント先に常駐している場合は、自社内のリーダーのみと面談(実質面接)するだけで終わる場合もあります。

この客先面談により候補者2~5人の中から、クライアントに1~2人程度選んでもらいます。ここで察しのいい人は気づいたかもしれませんが、ITコンサルタントはコンサルティングファームに就職できようと案件に入れなければ仕事がありません。

ITコンサルタントは会社ではなく案件に就職するというイメージのほうが近いでしょう。コンサルティングファームに就職・転職できたとしても、案件参加までは就職・転職活動は続いているのです。

SIerなどのよくあるIT系企業では会社に就職できれば後は、所属する部長が担当案件を割り振ることが普通であり、たとえ暇になってもどこかの案件のヘルプに参加させられるので、担当案件が無くなり暇になるということはありません。複数の案件を掛け持ちで担当することも多いです。

一方で、ITコンサルタントというと通常は客先常駐になるため一つの案件のみを担当することが普通です。そのためアベるという言葉があるのです。

クライアント先との面談で話す内容は、
・案件概要の確認
・候補者それぞれの自己紹介
・質疑応答
合計で30分程度の軽い感じの集団面接形式がほとんどです。営業かITコンサルタントのリーダーが中心となって仕切ります。候補者全員が自分の簡単な履歴書のようなものを持参していきます。

会社で指定されたフォーマットで1~3枚程度の簡単な履歴書のようなものです。その履歴書の中には、今まで担当した案件の概要と担当内容、自身の得意とする分野の紹介、保有資格などをまとめておきます。

職務履歴を記載したからといっても転職面接ではないので、つらつらと全部をクライアントに説明するような人は話が下手だと思われ採用されません。(実際に面談結果の悪いITコンサルタントにありがちな話し方です。)

クライアントは何人も似たようなITコンサルタントの候補者から必要な人数だけ選別しなければいけないので、話がつまらない人やわかりにくい人は印象が悪くなります。簡単にどんな分野が得意なのかを説明して、似たような案件での活躍実績を紹介し、今回のクライアントにおいてどのような役割を提供できるかを簡単に説明するだけでいいでしょう。

何度も言いますが、請負や準委任契約となるITコンサルタントに対して、候補者の選別は法律的には禁止されています。しかし、この事前顔合わせという名の事前面接により候補者は選別されます。ここでの候補者選択は面接ではなく、「業務要件に合致しなかったから」「業務を遂行できる能力を保持していなかったから」というような請負や準委任契約を遂行できる力を持っていなかったというテイで断られます。

実際のところ客先常駐を行っている企業はどの企業でもこの客先面接を行っているので、取り締まることもできません。それに、このような事前の顔合わせ制度がなくなればお互いが損をすることは目に見えているでしょう。

クライアントからすれば、誰かわからない人を月数百万という高額な費用を払って自社に入れるというリスクのあることを許容しているのに、期待通りの成果が出るか不安になります。

候補者側からすれば、業務内容の認識が合っているかもわからないし、クライアントが何を求めているのかがわからないから成果を出しにくいでしょう。そもそも雰囲気や考え方が合わなければ常駐しても溶け込むことすらできないので不安になります。

ITコンサルタントとしてやっていくのであれば、客先面接や自己アピールがうまくできるようにならないといけません。

客先面接がない案件もありますが、そのような案件では実際には数ヶ月もするとクライアントから「コストの割に大したこと無い」「高いのにウチの社員と変わらない、むしろパフォーマンスが低い」という理由から次の契約更新は無くなってしまうこともあります。事前の認識合わせは合ったほうがお互いのためです。

クライアントは自社の社員では解決できない部分があるからこそ外部のITコンサルタントを高い費用を払って雇おうとしているので、少なくともクライアント先の社員よりかは何かを秀でていなければいけません。それはIT系のスキルでもいいですし、コンサルティングスキルでもいいですし、マネージメントスキルでもいいです。グループ企業や下請けのSIerではない企業から雇われるからには、何かしらの付加価値を提供しなければITコンサルタントとは言えません。

事前の認識合わせにおいて自分がクライアントの求めるどの位置にいるかをアピールできるように業務経験や、話し方の訓練が必要ですね。

資格取得・勉強


ITコンサルタントがアベっている間に最も多く時間を費やすのが資格取得や勉強です。クライアント先への新規案件の営業・提案活動はそうそう頻繁に起こるものではありません。週に1,2回程度でしょう。

大型の提案案件であったり、ITコンサルタントがベテランのそれなりの地位にある人であったりすれば、引っ張りだこでアベっている間にもやることはたくさんあるでしょうが、そもそもそのような人はほとんどアベりません。

案件を複数掛け持ちしていたり、担当案件の終わりが見えてくれば、案件が終了するよりも早く新しい案件の提案活動を行ったりするので、アベることなく次の案件が決まります。

週に1,2回提案活動を行うだけでは普段何をしているのかというと、アベっている人専用の待機部屋で勉強に時間を費やしています。多くのコンサルティングファームではアベっている間、毎日簡単な日報を書いて報告が義務付けられています。やることがなくても何もしなければ報告する内容が無くなってしまうので、やらざるを得ません。

アベっているといえど、勤怠扱いになるのでちゃんと定時に会社に来なくてはいけません。案件に入っていなくとも通常通り給料が支払われるから仕方ありませんが、これがなかなかやる気の出ないもので遅刻やサボる人も多いのですが、中にはアベっている人たちの勤務時間を監視するような企業もあります。

私自身もアベっている時期に一度目をつけられたことがあります。普段はフレックスタイム製で朝10時オフィスにいればいいものの、アベっている間はフレックスタイム製ではなく朝9時にオフィスにいなければいけないルールだったのです。

10時半頃に出社することを2週間くらい繰り返していたら朝9時半に人事から電話が繰り返しきて注意されてしまいました。他にもこのような人が多すぎて今はもう監視制度がなくなったようですが、企業によりけりなので注意したほうが良いですね。アベっている間はやることないし、仕事があるときはちゃんとしているのでいいじゃないかと個人的には思うんですが、アベって仕事してないのにお金もらってる以上逆らえません。

アベっている間は毎日仕事もないので勉強するしかありません。人によっては(特に若手)特定の資格を取得するように命令されるでしょうが、ほとんどの人は業務命令もなく自分で好きな分野の勉強をします。英語の勉強をするもよし、気になってた分野の本をひたすら読みまくるもよし、勉強するふりをしてネットサーフィンをしてわずかな無駄知識を蓄えるもよしです。日報に書けるだけの内容なんて10分、20分で情報が収集できるのでほとんどの時間は自由です。

実際は寝てる人、出社しない人、ずっとスマホ見てるなんて人ばかりですが、そこは皆同じなので誰かにチクるようなことをする人はいません。この期間内に有給休暇を消化する人も多いです。

どれくらいの期間をアベるかというと、コンサルティングファーム内全体の稼働率や時期によりますが、平均すると一人あたり1ヶ月くらいでしょう。コンサルティングファームでは1案件のみを担当して客先常駐することが一般的なので、案件に入っていることを稼働しているとみなし、会社全体のITコンサルタントの稼働率を算出します。稼働率は90%もいけばかなり高いほうでしょう。80%を下回るようであれば稼働率が悪いです。

一年のうち時期による差はクライアントとの契約期間が四半期で区切られることが多いため、4月、7月、10月、1月のタイミングで人の入れ替わりが多くなります。その時期は一時的にアベる人も多く出てきますが、新規の案件も多くなる時期なのでそこまでアベる人が多すぎて大変なんてことにはなりません。1年のうち9,5ヶ月も稼働していれば稼働率80%です。

逆に言えば、4半期の区切り以外で案件が終了してしまったり、クライアントからの契約を解除されてしまったりすると新しい案件が見つかりにくくなるので、アベる期間が長くなってしまいます。特に入社したての人や、担当分野の狭いベテランクラスの人は案件が見つかりにくい傾向にあります。

担当分野の狭いベテランクラスの人で案件が見つかりにくいのは意外に思われるかもしれませんが、理由としては単純です。ベテランだから単価が高額であり、かつ、担当分野がせまいので条件に合う案件が見つかりにくいという理由からです。

コンサルティングファームである程度の職位を得てしまうと目標単価や売上が設定されていることが多いため、単価の安い案件には入れなくなります。そうなるとそのITコンサルタントの得意とする分野で難易度の高いポジションでの募集でなければ目標単価や売上を達成できなくなるので、職位が上がれば上がるほど新しい分野にはチャレンジしにくくなってしまいます。

それでも一回のアベる期間は長くとも3ヶ月程度です。3ヶ月もアベっていたとしても給料ダウンや自宅待機などはありません。本人のせいで案件が獲得できないとなれば何かしら特別処置がとられるかもしれませんが、会社としては雇ったからには教育してでも本人を矯正させる責任があります。案件が見つからないなら新規案件を探してきたり、人手の足りない案件に回す工夫をしたりしてITコンサルタントが長期間アベらないようにする工夫をするものです。

しかし年間の個人の稼働率が1年間の評価に影響するので、会社のせいだとかまけているわけにはいきません。アベる期間に少しでも今後の自分に役に立つ勉強をできるかどうかは、長い目で見れば今後のキャリアを大きく左右してしまうことでしょう。

リサーチ業務


コンサルティングファームでも客先常駐せずに受託開発や、請負業務を行うことも少ないながらあります。どんなコンサルティングファームだって自社の社員全員を収容できるほど大きくないオフィスとはいえ、一定数の社員は収容できる大きさのオフィスを持っています。そこでは客先常駐しないで済む案件を担当するITコンサルタントたちが自社で仕事をしているからです。

アベってしまったITコンサルタントのなかでも若手だと、自社内の案件を手伝うように上から命令されることがあります。それがリサーチ業務です。ITコンサルタントの職位の中で一番下位はアナリストとよばれる職位です。アナリストの主な業務は上位者の指示のもと資料作りや提案活動に必要となる情報収集・分析がメインです。この情報収集・分析業務をリサーチ業務とよんでいます。

頻度や期間としては多くはありませんが、自社内の案件で既存の案件メンバー以外に多くの人手が必要になった時に、アベっている人の中から適当に選別されます。

そこでは特に事前面談のようなこともなく、そのアベっている人の経歴や評価から割と適当に選別され、すぐに手伝ってもらいたい業務内容が伝えられます。
このリサーチ業務は人手の必要な手助けという意味もありますが、若手ITコンサルタントを鍛える意味合いのほうが強いです。ITコンサルタントとしてどのような動きをするべきなのか、先輩コンサルタントたちがどのようなことをしているのかを肌で感じて成長してもらうことが狙いです。

営業・提案活動は最優先事項となるので、その活動がない時にリサーチ業務を行ってもらいます。勉強や自己啓発よりも優先されます。お金をもらいながら勉強をしているという事自体が普通ではないのでそこは仕方ありません。

実際のリサーチ業務は若手ITコンサルタントに頼んでも期待通りの結果が出てこないことが多いのであまり期待はされていませんが、たまに優れた結果を出してくる若手がいます。そんな人がもし次の案件が決まっていなければ正式にチームに参加させてもらうこともありえるので、若手であれば与えられた仕事には全力で取り組んだ方が良いでしょう。

アサイン案件確定後

コンサルティングファームでは案件に参加することをアサインといいます。
逆に案件から外されることをリリースといいます。(例:新しいプロジェクトへのアサインが決まった。)

案件へのアサインが確定しても、実際に案件が始まるまでは特にやることもありません。クライアントとの契約は月の初めから行われることがほとんどなので、それまではアベり期間続行です。

営業・提案活動がなくなるので基本的には自由です。案件に必要な知識を得るためにネットや本から使えそうな情報を仕入れておきます。しかし、実際にアサインされてみないとどんな内容が求められているのかわからない部分も多いので、アサインが確定したら有給休暇の消化する人が多いです。

アサインされてしまうとまともに長期間休めることもなくなるので、割り切って思いっきり休むことが一番良いですね。

まとめ

ITコンサルティングは、人手が大量に必要なシステム開発に、まずリーダー格を送り込みます。
リーダー格が認められたタイミングで若手や、より専門的なスキルを持ったコンサルタントを送り込み拡大を狙います。
SIerとは違い競争入札を行うのではなく、他社の案件に潜り込みサポートを行うので基本は客先常駐です。客先の競争入札を手伝うことはあります。

アベってる間にやることは、
・新規案件への営業、提案活動
・資格取得、勉強
・リサーチ業務
・有給休暇取得

会社に所属するのではなく、案件に所属するのでフリーランスと似たような働き方になり、面談がうまくなることと、クライアントと毎回仲良くなることが必然的に求められます。ITコンサルタントが仕事を得るために必ず必要なスキルです。SEのときのITスキルだけでなく営業的なスキルも必要になります。

SEからITコンサルタント担った人はそこにギャップが生じますが、SEよりもより柔軟な働き方で自分のスキルを証明していかないとやっていけないので、SEよりかは厳しい世界です。
その分得られるもの(スキル、給与、経験)は多いと思います。

 

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