キャンプ場経営で考える戦略3類型!コスト?差別化?中小企業は差別化に集中せよ!他社との競争に勝つ考え方【事例紹介】

キャンプ場経営で考える戦略3類型!コスト?差別化?中小企業は差別化に集中せよ!他社との競争に勝つ考え方【事例紹介】

ポーターの戦略3類型をキャンプ場経営を具体例にして解説していきます!
自社がおかれる状況を分析したら、パターン化してどう攻めるかを考えるときに使えるフレームワーク(手法)です。

この記事を読むことで次のことが理解できます。

・ポーターの戦略3類型とは
・戦略3類型の具体例
・自社がとるべき戦略

ポーターの戦略3類型とは

アメリカの経営学者であるマイケル・ポーターという人が、経営戦略は「ポジショニングの選択」だと考えました。
自社がどのポジションを取るかは3種類(細かくは4種類)しかないと考え、その分類方法を一般的には「ポーターの戦略3類型」と呼んでいます。

ポーターいわく、
・状況は定型的に5S(ファイブフォース)で分析ができる
・答えはパターン(戦略3類型)化できる

と唱えて、実際の経営戦略の手法として一般的にも普及していきました。

5S(ファイブフォース)分析については、以前の記事を参考にしてくれればと思います。

キャンプ場経営で考える5S(ファイブフォース)分析!5つの脅威から自社の状況を分析せよ【事例紹介】

戦略3型とは、自社の取るべきポジションを下記の3種類のどこなのかを明確にします。
・コストリーダーシップ戦略(安く!)
・差別化戦略(他と違う!)
・集中戦略(狭い範囲で、↑のどっちかに集中!)

図にするとこのようになります。

それぞれの特徴を更に説明していきます。

コストリーダーシップ戦略

コストを抑えることで、とにかく他社より安く提供することを目標とします。

手段としては
・独自の流通チャネル(経路)を確保する
・生産性を向上させる仕組みを構築する
・自社生産を行う
などの大規模な手段が必要になるので、簡単にできるものではありません。

アパレルを例にすると、ユニクロが当てはまります!

企画・製造・販売を全て自社でやることで中間マージンを排除。売れ行きや在庫を全てデータ化することで、チャンスロス(商品があれば売れていた、有りすぎて在庫を抱えた)を減らすことができています。様々な手段から徹底的にコストを絞っていることがわかります。

決して安い質のものを入荷しているわけでもなく、むしろ原価率は他社よりも高いと言われているくらいです。通常のアパレルであれば原価率30%なところ、ユニクロは原価率が50%とも言われているのです。

ただ、コストリーダーシップのデメリットとしては
・相当な規模で展開できる生産規模を持っている必要がある
・価格競争を強いられ、価格で負けるとシェアを奪われやすい

といったものが考えられます。

差別化戦略

他社と違う価値を提供することを目標とします。

手段としては、
・独自の機能を持たせる
・他社ではできない技術を搭載する
・高級ブランドのイメージをつける
などです。

アパレルを例にすると、ZARAが当てはまります!

ZARAでは、週に2回も新商品が供給されます。そして追加生産はなし。そのため常に店頭に新商品が提供されていることになります。
一般的なアパレル会社では、デザインから販売まで1ヶ月はかかることが普通であるため、単純計算で8倍ものスピードで商品が出回り続けています。

その分顧客はZARAにいけば、「前に行ったときとは違った商品が見れる」「気に入った商品があって買わなかったら次はもう出会えてない」という考えを持つようになり、頻繁にZARAに買い物に行くようになるということです。リピーターを増やすことにも繋がりますよね。また、価格競争からも逃げられるというメリットもあります。

ZARAに限らず、アパレルでも高級ブランドの会社は差別化戦略に当てはまることになります。

差別化戦略のデメリットとしては
・価格が高くなりやすい
・商品(デザインや機能)刷新で顧客が離れやすい

といったものが考えられます。

集中戦略

コストリーダーシップ戦略と、差別化戦略は対象となる市場が広いことが前提でした。アパレルは生きてる人間全てが絡む市場なのでとても大きいですよね。
そのような潜在顧客が多い市場ではなく、ターゲットを絞った特定の範囲だけで、コストか差別化のどちらかに集中することを集中戦略といいます。

同様にアパレルを例にすると、しまむらが当てはまります!

しまむらは郊外に住む20~50代の主婦にターゲットを絞り(狭い市場)、独自の物流チャネルを構築して中間マージンを削除し、商品は大量に買い取ってから販売して売れるまで値下げを繰り返すことで在庫を持たいない、かつ低価格での提供(差別化)ができています。

一般的なアパレルでは都会の若者やオシャレをターゲットとしているところ、しまむらでは郊外の主婦にターゲットを絞っています。主婦と低価格は相性がいいですから、差別化集中戦略との合致性も高いということですね。

そして都会ではなく郊外を狙うことでも、商品の大量入荷と売れるまで店頭に残し続けるという独自のスタイルも続けられます。
キレイに陳列して最新のものを売ることよりも、安く多く売ることを目標としています。

中小企業のほとんどはこの集中戦略をとることになります。大規模な商品展開や流通チャネルの確保などが難しいからです。
集中戦略の中でも、コスト集中か、差別化集中かどちらのポジションを取るかどうかの選択となるでしょう。

キャンプ場に当てはめて考えてみる

まず、キャンプ場における市場の大きさ=人の集まりやすさ=キャンプ場の立地と読み替えます。

この戦略3類型を考えるときに、市場の大きさを「キャンプ業界」という市場で一緒くたで考えてしまうと中小企業は全く太刀打ちできないことになってしまうので、「キャンプ業界」の中でもターゲットをどう絞られるのか、という観点で考えることが大切になります。

そう考えると、
コストリーダーシップ戦略を取れるのは、首都圏の大型キャンプ場。例えば奥多摩のキャンプ場は、新宿から電車で1時間程度で行けるの市場は多いと考えられます。
差別化戦略を取れるのは、首都圏の中小キャンプ場。奥多摩のようにアクセスはいいけども、規模が小さいため何かしらの魅力を持っている必要があります。

コスト集中戦略を取れるのは、郊外の大型キャンプ場。人口の多い首都圏から来るまでも3時間以上かかったり、徒歩では行くことが難しいキャンプ場などが当てはまります。
差別化戦略を取れるのは、郊外の中小キャンプ場。アクセスが悪く潜在顧客が少ないものの、キャンプ場としての規模も大きくないためなにかしらの魅力で高価格帯で勝負せざるを得なくなります。

ただ、キャンプ場という業界全体で考えるとコストに大きな差は付けられないということと、顧客がそもそもコストを決め手として捉えていない人が多い市場だと私は思います。そのため、ほとんどのキャンプ場は差別化集中戦略をとっているのが実態です。

また、首都圏のキャンプ場であれば差別化や、コストリーダーシップを取らなくてもマイナス面がなければ顧客が集まるという特徴もあります。
そもそも首都圏のキャンプ場が少ないので、徒歩キャンパーや、初心者キャンパーなどはアクセスの良さからキャンプ場を選ぶ傾向になるためです。

ですがそれを踏まえた上で、他社よりも少しでも差をつけるための考え方ということで考えていきます。

実際に超人気なキャンプ場を例に考えてみます。

キャンプアンドキャビンズ那須高原(栃木県)

日本一予約がとれないといわれているキャンプアンドキャビンズ那須高原
公式サイトはこちらから

アクセス状況については、良くもないので対象市場が大きいとも言えないです。
最寄り駅は、以下の通りです。
東北新幹線 「那須塩原駅」 → キャンプ場 / 車40分
JR東北本線 「黒磯駅」 → キャンプ場 / 車20分
最寄バス停からキャンプ場までは徒歩30分。(公式サイトより引用)

東京駅から出発するとしても新幹線を使えば1時間半。車だと高速を使って2時間半。しかも徒歩だとバス停から徒歩30分もかかるため、徒歩キャンパーはほぼ想定していません。

コストについては、オートキャンプ場の1区画がレギュラーシーズンで1区画6300円のため、価格設定としては比較的高め。
(キャンプ場の1組あたりの平均料金は5000円です。)

キャンプサイトの広さは、約13,500坪 (約東京ドーム1つ分)というかなりの広さ。

このキャンプ場はとてもはっきりとした差別化戦略です。例えば
子供向けには、
・子供が水遊びができる小さな池
・水晶の発掘ができる洞窟
・毎日開催される子供向けのイベント
・川下り体験 など

大人向けには、
・豊富なレンタル品や、販売品
・エステ場の設置
・タンドリーチキンやローストビーフなどのデリバリー など

主なターゲットを、小さな子どもを連れて車で来る家族と設定されているように感じます。
非日常を家族で体験できるということに、他とは違った価値を提供しているようです。

ふもとっぱらキャンプ場(静岡県)

キャンプの聖地と言われる超大型キャンプ場
公式サイトはこちらから

アクセス状況については、良くもないので対象市場が大きいとも言えないです。
最寄り駅は、以下の通りです。
見延線「富士宮駅」 → キャンプ場 / 車35分
最寄バス停からキャンプ場までは徒歩30分。(公式サイトより引用)
東京駅から出発するとしても新幹線を使えば2時間。車だと高速を使って2時間半。しかも徒歩だとバス停から徒歩30分もかかるため、徒歩キャンパーはほぼ想定していません。

コストについては、1泊1人1000円、普通車1台につき2000円のため、価格設定としてはかなり安め。
(キャンプ場の1組あたりの平均料金は5000円です。)

キャンプサイトの広さは、東京ドーム約5個分、テントは最大1500張の広大なキャンプ場。 日本トップクラスの広さ。

戦略3類型に当てはめるとするとコストリーダーシップ戦略に当てはまると考えられます。

ただコストだけではなく、ここの特徴としては
・キャンプの聖地として超有名。ゆるキャン△にもでてる。
・どこからでも目の前の富士山を眺められる
・たまにキャンプイベントが開催される
・電気自転車をレンタルして富士山周辺を散策できる
という差別化戦略とも言える、魅力も存在します。

キャンプ・アンド・キャビンズやふもとっぱらキャンプ場の例でもわかるように、コストなのか差別化なのか何かに絞った戦略ではなく複合的な要因から人気を得ているようです。

キャンプ場の平均稼働率は約15%と言われていますが、キャンプ・アンド・キャビンズに至っては稼働率はほぼ100%です。
ふもとっぱらキャンプ場は1500張もテントが張れることとと、テントサイトに区画が制限されていないことから100%ではありませんが、真冬でも稼働率は高いです。公表されてはいませんが50%はゆうに超えるのではないでしょうか。

ですが、これらのキャンプ場はそもそもものすごく広大な土地や財力を持っているからこそできるとも考えられます。
そのため中小キャンプ場ではどのように考えたらいいかを考察してみます。

私の経営するキャンプ場(という設定)

いつも通りシナリオとしては、私が関東で東京からそこそこアクセスのいい片田舎の潰れたキャンプ場を誰かから無償で受け継ぎ、サラリーマンをやめてキャンプ場経営を始めるとします。とっても都合がよくて図々しい仮定ですね。

細かい設定はこちらの記事を元にします。今回は別に読まなくても分かる内容で書いてるので参考までに。

キャンプ場経営で考える4P(ヨンピー)分析!目的、やり方は?具体例と戦略の立て方【事例紹介】

広さとしては、テントサイト約25個分で比較的小さめ。キャンプ場の平均的な広さはテントサイト約30個と言われています。
アクセスとしては、群馬県の榛名山の近く。東京駅から車で高速を使い約2時間半。最寄りバス停からは徒歩15分という設定とします。

この条件のときに取る戦略としては差別化集中戦略です。
他キャンプ場には無いような魅力としては、
・3人までの少人数限定で静かな環境を作る
・グランピング、コテージ、各種レンタル品を備えて、気軽に楽しめる
・大浴場や清潔なトイレを設置する
・ペット同伴可能なサイトを作る
・電源サイトを設置してキャンピングカーや電化製品を使った料理を楽しませる
とします。

主なターゲットは首都圏から北関東の郊外に住む、2人~3人家族としています。コストや規模感で他キャンプ場よりも劣っていることから、高価格帯になってしまうものの、他社がやっていないことで攻める差別化集中戦略です。

ここで上げた特徴は、以前記事にしている
4P分析のProduct(プロダクト):製品の例と、

キャンプ場経営で考える4P(ヨンピー)分析!目的、やり方は?具体例と戦略の立て方【事例紹介】

STP分析のTargeting(ターゲティング)の例、

キャンプ場経営で考えるSTP分析!簡単にやり方を紹介!ニーズの着目と5Rとペルソナ設計【事例紹介】


と合致していますね。

やはり最初に書いているように、5S(ファイブフォース)による分析をしたら、戦略3類型でバターン化ということで自社が取るべき戦略がわかるようでした。

私の設定では上記のような差別化要素を設定していましたが、他に考えられるのは
・キャンプ料金のサブスクリプション(月額使い放題)制を導入する
・ローストビーフ作り体験を開く
・完全貸切を可能とする
・薪を使い放題とする
・川遊びや釣り体験ができるようにする
・予約から精算まで完全自動化する
・ドッグランを併設する
などなどいくらでもあると思います。大切なのは近隣の競合となるようなキャンプ場とは違うものを提供できるかです。

ターゲットの年齢、家族構成、好みなどを絞った上でどこにアプローチをかけるかを考えて差別化要素を考えます。
これはSTP分析でのペルソナ設計と同じですね。

まとめ

ポーターの戦略3類型とは、
・コストリーダーシップ戦略(安く!)
・差別化戦略(他と違う!)
・集中戦略(狭い範囲で、↑のどっちかに集中!)
の3つに分類される!

キャンプ場に当てはめた場合は、規模と財力を持った超人気キャンプ場は差別化戦略になりがち。
ほとんどの中小キャンプ場は差別化集中戦略をとることが有効になる。

キャンプ場の市場は、例に上げていたわかりやすいアパレルとは違い少し特殊です。
アウトドアのライフスタイルを追求しているのであって、売上を目的としていないキャンプ場も多いです。そのようなキャンプ場は別に戦略とかは考えていないでしょう。

また、立地条件がいいだけで特に戦略を考えなくてもある程度の集客は確保できます。
市場人口に対して提供できる場所が限られており、対抗となる市場と強豪するわけではありません。

アパレルであれば気軽に行ける範囲内に複数の会社があり顧客が選択する形になりますが、キャンプ場はそこまで比較はされません。
立地としてそもそも行ける場所なのかが大前提に来て、そこから施設には何があるのか、何ができるのかという選択になります。コスト面でも数千円~1,2万円程度なのでコストリーダーシップ戦略も取りにくいです。

だからこそ差別化戦略になりがちになりやすい市場であるとも言えますね。

こういう考え方があるんだなぁと思ってくれれば幸いです!

この記事内容は入っていませんが、今までこのブログで書いていた「キャンプ場経営で考える〇〇」シリーズを改めて体系化し、Kindleとして出版しました。
ブログ内の内容と基本は同じですが、経営戦略の考え方としてちゃんとした流れで記載しているので理解しやすいかと思います。

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