キャンプ場経営で考えるSTP分析!簡単にやり方を紹介!ニーズの着目と5Rとペルソナ設計【事例紹介】

キャンプ場経営で考えるSTP分析!簡単にやり方を紹介!ニーズの着目と5Rとペルソナ設計【事例紹介】

キャンプ経営を具体的な事例として当てはめ、STP(エスティーピー)分析を行います。
今までブログ内で経営分析手法(フレームワークと呼ばれる)の環境分析を中心に行ってきました。今回でやっと次のステップである基本戦略に入ります。全体の流れはこちらの記事に書いてあるので参考にどうぞ。

キャンプ場経営で考えるVRIO分析、経営分析(フレームワーク)の順番を整理【事例紹介】

この記事を読むことで次のことが理解できます。

・STP分析とは何か
・STP分析の具体的例
・自社の基本戦略の考え方と流れ

STP分析とは

自社の取り巻く環境に対して、3つの指標を使ってどの市場を狙いどの立ち位置でアピールしていくかを分析する手法です。
3つの指標とは「Segmentation(セグメンテーション):市場の細分化」、「Targeting(ターゲティング):狙う市場の決定」、「Positioning(ポジショニング):自社の立ち位置の明確化」の3つであり、この順番で分析を行います。それぞれの頭文字をとってSTP分析と呼ばれています。

STP分析は自社分析の中心であり、自社の今後を決める基本戦略のための分析手法ですので最も経営分析において重要であるといえます。
S,T,Pそれぞれに細かい評価基準、やり方が存在するので実践しながら考えていこうと思います。

実際にキャンプ場経営で考えてみよう!

キャンプ場経営に当てはめる

いつも通りシナリオとしては、私が関東で東京からそこそこアクセスのいい片田舎の潰れたキャンプ場を誰かから無償で受け継ぎ、サラリーマンをやめてキャンプ場経営を始めるとします。とっても都合がよくて図々しい仮定ですね。
それぞれの質問に対しては、私だったらこんな感じでキャンプ場経営していて、周りはこんな状況だろう(だといいなぁ)との考えのもの答えてみます。

Segmentation(セグメンテーション)

セグメンテーションは、まず顧客のニーズに注目することが重要になります。

ニーズに注目し、ターゲットとなる具体的な人物像を作り上げるための情報を洗い出します。
具体的な人物像とはどこに住んでいて、何歳で、どんな仕事をしていて、どんな家族構成なのか等々を仮定してユーザーの典型例を作り上げます。この典型的なユーザーのことをペルソナといいます。

このペルソナを作り上げるために、どんなニーズがあるのかをセグメンテーションでは考えていきます。

セグメンテーションの一般的指標

ニーズを抽出するために、セグメンテーションで用いる一般的な指標としては下記の4つがあります。
■地理的変数(国や地域、都市、人口、気候、文化・生活習慣など)
■人口統計的変数(年齢、性別、職業、所得、学歴、家族構成。ライフステージなど)
■心理的変数(価値観、趣味、嗜好、ライフスタイルなど)
■行動変数(購買状況、購買パターン、使用頻度、ロイヤリティなど

ニーズの洗い出し

ペルソナ設計をする前に、キャンプ場に来る顧客のニーズを洗い出してみます。ニーズを洗い出してから市場を分割することにしましょう。

【ライトユーザー】:オンシーズンに年0~2回のみ
・道具を持たずに気軽にキャンプを経験してみたい
・写真や動画映えするようなキレイなところに泊まりたい
・車やバイクが無いので交通の便がいいところがいい
・お酒やジューズ、お菓子をキャンプ場で買って準備を減らしたい
・シャワーだけじゃなく、お風呂に入りたい
・外でキャンプをしたいけど、寝るときはコテージみたいな室内がいい
・川遊びや花火もしたい
・子供やおじいちゃんおばあちゃんと一緒に行きたい
・近くの観光地や自然を一緒に満喫したい
・大人数で音楽を鳴らしたりワイワイやりたい

【ミドルユーザー】冬季を除いて年2~4回程度
・直火OKのサイト(テントを張ったりして泊まるエリアのこと)で直火で焚き火がしたい
・焚き火を使った美味しい料理を作りたい
・ハンモック泊ができる場所がいい
・グループ客や家族客とは離れて静かに泊まりたい
・面倒な電話予約や受付はできるだけ省きたい
・近くで釣りもしたい
・他の客とは一定上の距離を開けていたい
・タープを張ったり道具を展開したいので一定以上の広さが欲しい
・バイクや自転車で気軽に行きたい
・泊まった次の日はお昼までゆっくりしていたい
・ペットと一緒に泊まりたい

【ヘビーユーザー】シーズン関係なく年4回以上程度
・電源サイト(サイトごとに自由に使える電源があり、キャンピングカーの充電や電子レンジ等の大容量の電気が使える)が欲しい
・雪中キャンプがしたい
・キャンピングカーでの乗り入れがしたい
・回数を重ねると割引があると嬉しい

ニーズは個人的な感覚で洗い出して分類しました。ざっと思いつくのはこんな感じでしょう。
ユーザーをキャンプ利用の頻度によって3段階に分けて、それぞれでニーズを洗い出しました。回数の根拠はオートキャンプ白書(キャンプの統計データを集めた本)の記載を参照しています。1年間にキャンプしたことのある人たちでは平均3.3回で、1番多いのが1回のみで30%ちょっといたので、このような区分にしました。

しかし、3つだけではセグメンテーションとしては不十分です。
キャンプにくる人は、家族連れや複数世代の家族、友人グループなど様々です。それらをグループ分けします。

顧客をざっと大きくグループわけするとこのようにセグメンテーションにできると思います。このような評価軸に沿って企業を配置する図のことをポジショニングマップといいます。
※円の大きさは顧客の多さを表してます。最も多いのは4~5人での1家族利用客です。図の真ん中の円ですね。

キャンプ地の広さや設備、売上に最も影響する「人数」と「1グループあたりの消費金額」を軸にグループ分けしました。
(統計データを参考に個人的な感覚で分けたので、あくまでも一例として捉えてくださいね。)

次に、このセグメンテーションした市場のどこであれば、優位性を確保できるのかを考えていきます。

自社の整理

優位性を考えるためには自社環境を把握しておく必要がありますね。
そのために今までの記事で自社を取り巻く環境分析を行ってきました。3C分析、VRIO分析、PEST分析、5F分析、SWOT分析ですね。
その要点を整理し、セグメンテーションと親和性が高く顧客を集めやすい市場を狙っていきます。

そのため、自社の特徴を記載していきます。自社(キャンプ場)の特徴はこんな感じです。(あくまでも私が経営してたらこんな感じだろうなぁという特徴です。今までの記事から今回用に多少書き換えてます)
・東京から高速を使って2時間半くらいで到着できる。
・最寄り駅からは車で30分。最寄りバス停からは徒歩で10分。
・最寄りスーパーは車で20分。最寄りコンビニまで車で10分。
・最寄りの川まで徒歩10分。釣りは禁止されていないが魚がいない。
・主な設備は区画サイト20(キャンプ場としては小規模)、車の横付けが可能な比較的広めのサイト、ハンモックが使用できるサイト、雪でも使えるサイト、屋根付きのサイトなど複数タイプがある。さらにコテージ2つ、グランピング2組利用可能
・大浴場、コインシャワー、自動販売機、BBQができる炊事場が付いている。
・薪、軽食、お酒販売、道具レンタルを提供する。
・オンラインでの完全予約、精算システムを導入している。
・近隣(車30分圏内)にはフリーサイト(サイトが区切られておらず自由な場所に寝泊まりできる)で50組収容可能な大型のキャンプ場があるが、そこは旅館を備えているため旅館客がメイン。電源サイトと大きめな炊事場があるが、シャワーや大浴場は無く旅館の客とは完全に分けている。老夫婦により経営されていて電話対応のみ、かつ、薪の販売のみ。

という設定です。

甘めに設定してるけど許してね

Targeting(ターゲティング)

ターゲティングでは、セグメンテーションで細分化したどの層を狙うかを決めます。
狙う層を決めたら、3C分析でそのターゲットが本当に問題がないかを評価します。

5Rでの評価

その評価方法として5R(ファイブアール)と言われる指標があります。

Realistic Scale(規模は十分か?)
Rate of Growth(成長率はあるか?)
Rank & Ripple Effect(優位性と波及効果はあるか?)
Reach(到達可能か?)
Rival(競合状況はどうか?)

ここでは図でいうとこの層をターゲットとしようと私は判断します。

根拠としては「小規模なキャンプ場であることから、1~3人の少人数向けのキャンプ場とする。一人ひとりのスペースや設備により快適性を上げることで、満足度を上げることを引き換えに消費金額を上げることと、リピート客の獲得を目指す」ということを基本スタンスとします。

どうしてこのような判断に至ったかというと、今までの自社の環境分析により、強み弱みや戦略の取り方を整理してきているのでそちらを参照してください。

そして、この層を狙うと決めたので5Rの評価を当てはめて、市場価値を判断してみます。
Realistic Scale(規模は十分か?)
キャンプ市場自体は約10年の間少しづつ増えています。
キャンプ場利用者で1組あたりの人数が1~3人の占める割合は約3割です。(最も多いのは4人組の家族客ですが、今回は少人数の層を狙うため3人までを層とします。)
グランピングの流行によりキャンプ場の多様化とニーズの増加が見られるようになったため、市場規模としては十分であると判断します。

Rate of Growth(成長率はあるか?)
1~3人の少人数をターゲットとしていますが、最近ではDINKSと呼ばれる子供のいない夫婦や、子供1人だけの核家族などが増えているので、狙う層の成長率はあるものと考えられます。

Rank & Ripple Effect(優位性と波及効果はあるか?)
1組あたりの人数制限まで実施しているキャンプ場はほとんどないため優位性はあると考えられます。
波及効果としては、YouTubeやTwitter、InstagramなどのSNSの流行により「隠れ家的なゆっくり過ごせるキャンプ場」として口コミが簡単に波及してくれるものと考えられます。

また、登山客やツーリング客のようなニッチなターゲットを取り込むことで、観光客や近隣施設への顧客増加まで波及し、近隣産業の衰退を防ぐ効果まであるかもしれません。

Reach(顧客へ到達可能か?)
YouTubeやTwitter、InstagramなどのSNSを利用することでキャンプ場経営者から簡単に顧客へ発信することで、顧客へ到達可能であると判断します。
ホームページを作成したり、市町村のパンフレットやホームページ等にも掲載してもらい、多方面から発信をして顧客へメッセージを到達させます。

Rival(競合状況はどうか?)
近隣のキャンプ場は大型のフリーサイトキャンプ場であるため狙っている層がかぶることもありません。
もし仮に、今後近くに似たようなターゲティングをしたキャンプ場が作られたとしても、大浴場やグランピング、コテージ泊の改良等により競合を回避または打倒することを考えます。
そのため現時点では競合状況に問題はなく、今後も展開は明るいと判断します。

これで狙っている層が問題ないことがわかりましたね。まとめると
「都内から車で2時間半で行けて、~3人までの少人数限定キャンプ場。大浴場やグランピング、コテージ、各種レンタル品を兼ね備えた大人のための快適な隠れ家的キャンプ場」というのかウチのキャンプ場のコンセプト(仮)です。
都合がいい設定なのは放っといて・・・

ペルソナ設計

ターゲティングで狙うそうに当てはまる人物像を想像し、ペルソナを作り上げます。
キャンプ利用者の中で一番ボリュームのいる家族客でペルソナを作ります。例えばこんな具合にできるだけ細かく作り上げます。

ペルソナを作り上げることで、ニーズが具体的に把握できるようになりターゲット層が明確になります。
また、具体的な施策を考える際にどのような人がどのようなニーズを求めてるかが明確化されるので、ターゲティングの際のペルソナ設計は細ければ細かいほどいいでしょう。

例えばこの家族ですと、このようなニーズが見えてくると思います。
父のニーズ:釣りや登山もしたい。
母のニーズ:焚き火を使った料理がしたい。テント泊以外の宿泊がしたい。
娘のニーズ:お風呂や水回り環境が整っていて欲しい。
共通のニーズ:区画サイトで広いエリアが確保して欲しい。コンパクトカー1台で週末に簡単に通える距離がいい。

ペルソナはあくまでも消費行動に繋がる部分の人物設計だけで十分です。名前が~~で、上司が嫌いで~~とか、関係ない部分まで作り上げる必要はありません。

Positioning(ポジショニング)

ポジショニングでは、競合と比較してターゲットから魅力的に見えるもの、優位に立てるものを明確にしていきます。

ポジショニングでは競合と比較する軸を持って比較することが重要になります。
値段、品質、設備、利便性など、顧客が求める指標の中から有効なものを選び、競合と比較します。比較軸は多くなりすぎると複雑になり、大切な観点やデータを見逃しかねないので、せいぜい比較軸は2~4とするのが一般的です。

私のキャンプ場(設定)では近隣にフリーサイトの大型キャンプ場が一つだけでしたが、市場としては先程のターゲティング図は実際にこのようにキャンプ場の立地や設備により利用客が分けられます。

この図を見るとわかりますが、それぞれのキャンプ場ターゲットがかぶっているところもあります。
私がターゲットとした赤枠内も他社と競合している部分があると言えますね。現時点では近隣施設との競合はないとはいえ、市場としては十分に競合は存在します。だからこそ競合と比較することが重要であるということです。

ということで、比較軸を決めて競合と比較します。
比較軸としては「サイトの快適度」と「お風呂や水回りの衛生設備」を選定しました。これは競合が持っていない軸でかつ、ターゲットからも求められているため、優位になれると判断したからです。
「サイトの快適度」はキャンプ自体の満足度に結びつき、「お風呂や水回りの衛生設備」はキャンプに付随する付加価値ですし、キャンプ場としてはどちらも必ず必要な設備になるので評価軸としては問題ないでしょう。

実際の比較図はこのようになります。

私の身の回りキャンプ好きでもお風呂がついているのか、屋外トイレがキレイで夜怖くないか、直火OKなのかという観点はかなり重要視している人が多いように思えます。
このように2つの評価軸として、何があれば評価が高くなっているのかを明確にできると良いでしょう。評価が高い=ニーズが多いということです。

基本戦略の確定

こうして自社のとる基本戦略が確定しました。
「都内から車で2時間半で行けて、~3人までの少人数限定キャンプ場。大浴場やグランピング、コテージ、各種レンタル品を兼ね備えた大人のための快適な隠れ家的キャンプ場」 というのがコンセプトでした。

そのための基本戦略としては、
「サイトの快適度」と「お風呂や水回りの衛生設備」を充実させて顧客の利便性を上げて満足度向上を図り、顧客単価の増加とリピーターの獲得を狙う というのが基本戦略になります。

このSTP分析で導き出した基本戦略を元に市場に打って出ることになります。しかし、この基本戦略が市場で優位ではない、利益が生み出せない等の不都合があればその都度基本戦略を考え直すことも重要です。市場も人間も生モノですので、いつまでも同じ戦い方をしていては勝つことはできません。

STP分析をやり直してもよし、ペルソナ設計をやり直してもよし、3C分析で環境分析をしてもよし、顧客のニーズに柔軟に対応することが基本戦略の鍵となってきます。

そして更に具体的な施策や戦略については4P(ヨンピー)分析を使って考えていきます。
STP分析としてはここまでになります。

まとめ

STP分析とは自社の取り巻く環境に対して、市場の細分化:Segmentation(セグメンテーション)、狙う市場の決定:Targeting(ターゲティング)、自社の立ち位置の明確化:Positioning(ポジショニング)の3つの順番で行い、どの市場を狙いどの立ち位置でアピールしていくかを分析する手法。

S:セグメンテーションでは、顧客のニーズから市場を複数のグループ分けする。
T:ターゲティングでは、ペルソナ設計をして自社の強みから親和性の高い層に狙いを定める。
P:ポジショニングでは、他社と比較してターゲットにどのような優位性を取れるかを明らかにする。

このSTP分析を用いて自社の市場でのコンセプトや基本戦略を確定させて、具体的な施策を考える土台として利用する。
自社全員で基本戦略を共有することで進むべき道や注力すべき設備・商品が明確になり、他社との競合を避けつつ顧客の獲得が可能になる。
(しかし、場合によりSTP分析の見直しや、市場の成長性等の環境分析の見直しも必要となる。)

今まで行ってきたSWOT分析や3C分析のような環境分析よりも、踏み込んだ具体的な話題を取り扱いました。

私は実際にキャンプ場経営をしていない状態ですがSTP分析を行うことで、理想の戦い方はわかりました。
もし、あなたがこれから新規事業をやりたい、新しい商品を開発したいなど考えていたとしても、実際にやっている途中という設定であればSTP分析を行うことができます。そうすれば自分のやりたいことのどこに注力すればいいのか、何かヒントが得られるかもしれませんね。

実際に着手し始めて環境や目標が見えてきたら、もう一度STP分析をすることをオススメします。
新しい発見や、方向性の再確認ができるはずです。

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ブログ内の内容と基本は同じですが、経営戦略の考え方としてちゃんとした流れで記載しているので理解しやすいかと思います。

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